SUSTAINABILITY 2023.08.02

「GEECHS Social Impact Flow」が掲げるギークスのサスティナビリティ推進とは?

「GEECHS Social Impact Flow」が掲げるギークスのサスティナビリティ推進とは?

ギークスでは2023年5月に発表した「CSRレポート2023」において、私たちの事業活動と社会貢献性の連携を可視化した「GEECHS Social Impact Flow」を公開しました。

「IT人材不足」という社会課題の解決に向け、私たちはどのような歩みを進めていくのか。社内外への発信を通じ、社会的責任に対するコミットメントを深めています。

今回は「GEECHS Social Impact Flow」を策定するために伴走いただいた株式会社ニューロマジックの池田 征央さんとギークスの広報/サスティナビリティ推進部 部長の佐々木の対談を通じて、策定の背景や意義、公開に至るまでのストーリーや今後の展望などについてご紹介します。

「GEECHS Social Impact Flow」策定の背景

ー本日はよろしくお願いします。まず最初に、「GEECHS Social Impact Flow」についてお伺いできますか?

佐々木:ギークスの事業活動と社会貢献性の繋がりを可視化したものが「GEECHS Social Impact Flow」です。これは、ニューロマジックの池田さんからご紹介いただいた「価値創造プロセス」の話題が発端となって、策定が始まりました。

▲「GEECHS Social Impact Flow」

池田さん:「GEECHS Social Impact Flow」は、昨今、サスティナビリティ推進の文脈の中で語られることが増えてきた「価値創造プロセス」にあたります。企業の経営資本、事業構成、社会貢献性、社会への影響度の一連の流れを明示し、企業の事業活動が社会の持続可能性に与えるインパクトを表したものです。

この「価値創造プロセス」は、統合報告書(※1)への掲載を推奨されているものです。統合報告書を発行する企業数は、コーポレートガバナンス・コード(※2)の制定と改訂や、サステナビリティ推進に関するアワードの開始などを契機に増加傾向にあり、国内ではここ数年、毎年100社以上のペースで増えています。

※1 旧 国際統合報告評議会(2021年にサステナビリティ会計基準審議会と合併)が発表した国際統合報告フレームワークに基づく報告書
※2 2015年に金融庁と東京証券取引所が原案を公表した「企業統治の指針」。2021年に改訂され、株主以外のステークホルダーに対する影響や、サステナビリティに関する情報開示が強く求められるようになった

最近では、統合報告書以外でも「価値創造プロセス」をよく目にします。サステナビリティレポートや採用冊子に盛り込むケースもあれば、有価証券報告書でも目にすることもあります。

元々「価値創造プロセス」は、株主・投資家のみならず、顧客、サプライヤー、地域社会などのマルチステークホルダーと自社事業の関係性を図示するものなので、クライアントや協業パートナー、会社で働くメンバーや求職者などに対しても「自社の社会貢献性について持ってほしい印象」を訴求しやすいのかもしれません。投資家がESG投資の観点で、企業価値を判断するためにも重要とされているので、上場企業を中心に策定と開示が進んでいます。

ー投資家の方々からも注目されているんですね。

池田さん:サスティナビリティ推進の評価基準で著名なGRI(※)においても、その評価基準は100項目以上あります。そのすべてで高評価を獲得することは相当のサステナビリティ推進・管理の体制が要求されるので一朝一夕での達成は難しいでしょう。

ただ、投資家の皆さんもその一つひとつを細かく確認し、評価することは難しいので、「価値創造プロセス」のように事業活動と社会貢献性の連携が可視化されているものがあると、サスティナビリティに与える影響をストーリーで組み立て、構造的に判断がしやすいというお話を聞いたことがあり、私もその通りだなと思いました。

※ GRI:「Global Reporting Initiative」の略。企業や政府などによる気候変動や人権問題など環境や社会の持続可能性(サステナビリティ)に関する取り組みを推進するため国際基準を策定する独立組織。

佐々木:池田さんから「価値創造プロセス」のギークスバージョンを作りませんか?と提案を受けたとき、「そうそう、これを求めていた!」と思ったんです。

ギークスには、グランドビジョン、ESGステートメント、ESGマップ、そして「5つのマテリアリティ」があるのですが、なんとなく「点」だったんですよね。「線」というか、ストーリーが見えづらかった。その課題に対し、「結局何を整えれば良いのか」が私自身見えていなかったんです。

池田さん:投資家の方々も、佐々木さんのお話と同様の想いを抱くのではないかと思います。企業と社会の繋がりが見えてこなければ、「投資価値がある企業なのかどうか」を分析・評価しにくいからです。また、そもそも、情報を開示する姿勢がある企業かどうか、というのも判断材料のひとつです。

最近では「ミッション・ビジョン・バリュー(MVV)」に沿って、社会貢献性との一貫したプロセスが描けているのか、という点も判断され始めているように感じます。実際に経済産業省の委員会や研究会の資料でもテーマにされていますし、パーパス経営が語られるようになったのも同様の背景でしょう。

本来、「価値創造プロセス」にはMVVの文言は入れなくても良いんですが、「GEECHS Social Impact Flow」に連携させた理由にはそういった社会機運がありました。

佐々木:今回の策定までの過程によって、改めて社会貢献性という観点から自社を俯瞰する良い機会になりました。一方、策定にあたっては、どのような情報を発信するか、言葉を用いるかなどの取捨選択も必要で、難しさもありました。

池田さん:そうですよね。そこは「腹決め」が必要になってくるところでもあります。どの情報を組み込むかは私たちが提案したとしても、判断いただくのは皆さんなので、佐々木さんの手腕で決定して、伝えてくださったのはありがたかったですね。

佐々木:要所要所で社内での検討・相談は行っていましたが、サスティナビリティ推進担当としての価値を生み出したいと思っていたので、自身の意見やアイデアを大切にしながら進めました。結果的には、決算開示資料を通じて投資家の方々に向けても発表できましたし、社内からは採用活動においても活用できてありがたいという言葉もあり、一定の価値提供ができたのではないかと思っています。

ー佐々木さんの中には、「サスティナビリティ推進という考え方を社内にもっと浸透させたい!」という想いもあったんですよね。

佐々木:そうですね。この4月から広報/サスティナビリティ推進部と「部」に昇格したこともあり、事業活動と社会貢献性の繋がりを、社内のメンバーにもっと自分事として考えてもらえるようなアプローチをしたいと思っていました。「メンバーへの浸透」はまだまだ道半ばですが、「分かりやすさ」という点から「GEECHS Social Impact Flow」が理解浸透に向けた足がかりとなればいいなと思っています。

池田さん:どのようなステークホルダーから見ても分かりやすいモノがあるって大事なことだなと思っています。「価値創造プロセス」の策定を佐々木さんと進めていくことは、社内におけるサスティナビリティ推進の体制構築や意義づけの整理という意味でも貢献できると思いました。採用活動でも活用いただけているということをお伺いできて、個人的にもとても嬉しいです。

「GEECHS Social Impact Flow」完成に至るまで

ー作成していく中で、ニューロマジックさんにとって難しいこともあったのでは?と想像します。

池田さん:1番悩んだのは「ギークスらしさ」をどのように見せるかでした。価値の置き方といいますか、ユニークさをどう伝えていくのか。頭を悩ませましたね。

直近のギークスのニュースに、豪州企業のM&Aの話があったのですが、投資家の方々の目線で考えると、このM&Aを経た中で、ギークスに投資を続ける意義にも配慮する必要があるなと思いました。

「『価値創造プロセス』」の策定において、海外への事業展開や価値の置き方について、どのように考え、伝えていきたいと考えていらっしゃいますか?」と、結構深いところまで佐々木さんにお伺いしたんです。グループ会社であるシードテックのオフショア開発やIT留学など、事業・サービスの成り立ちや提供価値、社会貢献性などを細かくヒアリングさせていただいて、そこからはパズルのように組み立てていきました。

佐々木:池田さんからの初回提出の際、自分の語彙を恨みたいくらい、「すごい」という言葉しか出てこなかったんですよね。実際、そこでいただいたアウトプットから微修正したものが今の「GEECHS Social Impact Flow」です。何度もアウトプットの行き来があるかもしれないと思っていたんですが、そんなことはありませんでした。

池田さん:そう言っていただき恐縮です(笑)。実を言うと、ギークスらしさ・競合優位性をどのように組み込むかに密かに熱を込めていたんです。ITフリーランスの方々への細やかなサポート体制も魅力ですし、豪州やフィリピンに事業を展開しているグローバルな視点もギークスさんならではの特色だと思うので、どういう風にシナリオとして落とし込むのか。

その考慮の中で、グランドビジョンに立ち返ったんです。「21世紀でもっとも感動を与えた会社になる」と繋がるのはここだなと。国内での市場規模が大きいことは、大きな「感動」を生み出すことにも繋がると思いましたし、国境を超えてIT人材の母数拡大・スキルシェアにおける事業を展開していることも「感動」に繋がるという確信がありました。

「3社間のシナジーを生み出す」という旨は決算開示資料にも明記されていたので、「このシナリオで海外展開への説明やビジョンへの繋がりが説明できる」と思い、アウトプットをお渡ししました。

佐々木:ニューロマジックさんとの出会いはサスティナビリティ推進案件ではなくデザイン案件で、しかも、その折は発注できなかったんですけど(笑)、その提案過程の中で課題の棚卸し、アイデアの壁打ちの相手をしていただいたことが印象に残っていたんです。

会社としてのアウトプットである以上、「それは佐々木の解釈だよね?」と捉えられてしまうモノになるのは避けたくて。したがって、前提として、社外からの客観的な目線に立ち、ギークスの実情と「らしさ」を把握してくれていて、サスティナビリティに知見のある会社にお願いしたいなと思っていたんです。

池田さん:弊社はクライアントの声をしっかりヒアリングした上でカスタマイズしていくという組織文化があるので、そこがフィットしたのかもしれません。ただ、サスティナビリティ推進全般の潮流や世の中の流れにアジャストさせることも観点としては重要なので、いわゆるコンサルタントのような立ち位置とユーザーカスタマイズの観点の双方のバランスを取りながら、お役に立てたらと思っていました。

ー池田さんから見ると、率直にギークスのサスティナビリティの取り組みはどう映っているのでしょうか?

池田さん:製造業などとは違って、環境負荷に影響を与える業界ではないので、一般的にサスティナビリティの色を出しにくいところはあると思います。

また、「IT人材不足」という社会課題へのアプローチが事業の主軸であり、直近の決算開示資料においても明示されているので、投資家の方々からのサスティナビリティ推進における情報開示へのプレッシャーは少ないほうかもしれません。

今回のお話をいただいたとき、ギークスさんが社外に開示している情報をいろいろと巡りましたが、ESGマップや5つのマテリアリティがあって、コーポレートサイトにSUSTAINABILITYページがあって…と、競合他社さんと比べて先進的な印象を受けました。ただ、直近は競合他社さんも情報開示を少しずつ進めていっている中で、独自性をどこで打ち出すか、そのポイントを考慮すべきだなと感じていました。

佐々木:サスティナビリティ推進に対する発信は、アウター・インナーどちらのブランディングにも影響を与えるものだと思っています。

ギークスがサスティナビリティ推進の発信に力を入れ始めた頃(SUSTAINABILITYページの作成は2020年初頭)はまだ、このカテゴリの情報発信を行うだけで目立つことができるような印象を受けていましたが、今では開示や発信は企業として「当たり前」という状況になってきています。

今後、上場企業や業界他社の情報展開がより活発化した際に、どこで独自性や優位性を担保していくか。毎年発表している「CSRレポート」もありますが、今回策定した「GEECHS Social Impact Flow」のアウトプット面だけでなく、策定に至るまでに整理した情報や湧き上がったアイデアを生かして、サスティナビリティ領域のPRに繋げていきたいですね。

ー先ほど、採用活動でも役立っているというお話もありましたよね。

佐々木:新卒採用が顕著ですが、求職者側が企業の社会貢献性を判断材料の一つにしているんです。

池田さん:そうですよね。特にZ世代の学生は「この会社で働くことの意味は何か」ということを見ているとよく耳にします。事業やサービスに意味を持たせる一つの切り口が「サスティナビリティにどのように貢献しているのか」「事業の社会的なインパクトは何か、どこにあるのか」だったりするので、サスティナビリティ推進に関する情報発信はより重要になってくると思います。

今後の展望

ー今後の展望を教えてください。

池田さん:先ほども申し上げましたが、「MVV」と「サスティナビリティ」と「自社の事業」の紐付きを統合して語れるのかどうか、が市場から求められるようになるのではと感じています。そこへの価値提供がニューロマジックと私自身のミッションだなと感じています。

佐々木:インナーコミュニケーションとしてもその観点は重要だと思っていて、メンバーはどうしても目の前の業務や数字を追うことに必死になってしまいます。それは当たり前のことだと思います。

日々の業務の積み重ねが社会課題解決、サスティナビリティ推進に繋がることを想起させることはなかなか難しいものですし、自身で気づくことができるメンバーは僅かだと思います。したがって、どれだけ伝え続けられるかどうか、質も量も伴った情報発信が重要ですし、その役割を忠実に担えればと思っています。

池田さん:「価値創造プロセス」の中にグランドビジョンの言葉を加えたのは、「働くメンバーみんなに普段の仕事がサスティナビリティ推進に繋がるという意識を持っていただければ…」という佐々木さんの想いが盛り込めたらと思っていました。今後はさらに、事業としてのKPI/KGIとサスティナビリティ推進をどのように関連づけていくのか、まで話していけるようになれば嬉しいなと思っていますし、そこもご一緒させてください(笑)。

ー最後に、サスティナビリティの取り組みを発信する意義とは、どういったところにありますか?

佐々木:ビジネスはそもそも、社会課題や企業課題を解決することで成り立っていますし、「企業は社会の公器」という言葉もある通り、社会課題の解決は、企業に与えられた使命のひとつだと思っています。

その上で、新たな社会課題を企業活動を通じて作り出しては意味がないので、人的資本やCO2排出量などあらゆる観点での情報開示とそれぞれの強化、改善施策を通じて、社会を守り、より良くすることが求められているのだと思います。意義というよりは責任や責務に近い印象があります。

池田さん:僕も根本的に似た考えです。サスティナビリティの重要性が叫ばれる前から、投資家の方々が「この会社は存続するか?」を見る基準の1つに「社会に必要とされている事業をやっているかどうか」があったと言われています。

社会に必要とされるとは、誰かが困っている課題を解決すること、したがって社会的に意義があるという論法であり、「社会にこれほどまでに必要とされている企業が潰れるはずがない」「株価も下がらないだろう」という考え方です。ESG投資などの概念が出る前なので経済価値を基準に判断していますが、「その事業が社会価値を持っているか」は巡り巡って経済価値を守ることにもつながるという認識が昔からあったと解釈しています。

社会が成熟したことで、企業も投資家も「経済価値の追求だけでは永く続かないのかもしれない」という考え方が言語化され、社会価値が以前より視野に入りやすくなっただけなのではないかと思っています。

「自分は何をなすべきか」に意識が向きやすくなった社会だからこそ、「この事業は何の意味があるのか?」を重要視するようになったのかもしれませんね。

ーありがとうございました!

会社を超えた二人の密な連携により、「GEECHS Social Impact Flow」は作られていきました。ギークスは今後も、ステークホルダーの皆様に向けて、サスティナビリティの発信を強化してまいります!ぜひご期待ください。