パリへの切符に手が届き始めた手応えとこれからの課題。ーシッティングバレーボール2つの国際大会レポートー
ギークスの広報・サスティナビリティ推進部 部長である佐々木が、シッティングバレーボールの日本代表として、10月22日から28日にかけて中国の杭州で開催された「杭州2022アジアパラ競技大会(以下アジア大会)」に、そして11月11日から18日にかけてエジプト・カイロで開催された「ワールドカップ」に出場しました。
悔しい結果に終わったアジア大会と日本代表初の世界大会ベスト8という結果を得たワールドカップ、2つの大会のレポートを佐々木がまとめました。レポートの最後には、パラアスリートとビジネスパーソンの二刀流を極めようとしているからこそ感じる、組織への貢献の想いが伝えられています。
シッティングバレーボールとは、その名の通り「座ったまま(sitting)行うバレーボール」のこと。お尻を床につけた状態でスパイクやサーブを打ったり、トスを上げたり、移動したり…というスポーツ。普通のバレーボールと比べて、コートは一回り小さく、ネットの高さも1m15cm(男子用)となっている。パラリンピックの正式種目ではあるが、日本では障害のある・なしに関わらず、親しまれている。
代表キャリア3回目のアジア大会
シッティングバレーボールの日本代表選手として初めて臨んだ国際大会が、2014年に韓国・仁川で開催されたアジア大会でした。イラン戦のピンチサーバー(サーブのために交代出場する役割)で出場したのがデビュー戦でしたが、緊張する余裕がないほど国際大会の雰囲気に飲まれていた記憶があります。
それから10年近く、数回の代表落選も経験しながら辿り着いたのが今回のアジア大会。2018年のインドネシア・ジャカルタ大会も入れると3回目(4年に1度開催されるので)の出場です。パラリンピックや世界選手権などの出場経験もありますが、代表キャリアを定期的に振り返る機会だと思っているのがアジア大会です。
これまでの2回はピンチサーバー要員。現実に即して言えば「出場機会がないので、遠征の記念に1,2度出してもらえる選手」でした。2週間近い遠征期間で出場は長くて3分というようなポジションだったのが、今回はレギュラーとしての出場となり、初戦の韓国戦で先発メンバーとしてコートに入ったとき、感慨深い気持ちになりました。
「継続は力なり」や「無事是名馬」というような言葉がありますが、怪我なくコツコツとやり続けた結果、世界と対峙できる選手にまで成長できたことは、充実感につながるものです。
結果としては悔しい限りのアジア6位。初戦の韓国戦に勝てば決勝トーナメント、負ければ順位決定戦という大一番に負けたことが響きました(中国は格上なので)。
韓国とは、7月のパリパラリンピックアジア予選にてフルセットで負けたこともあり、その雪辱を期す意味で準備してきましたが、韓国の準備のほうが上回っていました。これは結果が示す通りです。
ミャンマーやカンボジアといった普段なかなか顔を合わせる機会がない東南アジア諸国との試合は1勝1敗。今、振り返ると2連勝できていたのではないか?と感じてしまいますが、このときの悔しさややるせなさがワールドカップに繋がったのだと思います。
日本代表初の世界大会ベスト8を飾ったワールドカップ
今回が第1回の開催となるワールドカップに出場するため、アジア大会の帰国からほぼ1週間ほどで飛び立った先は、エジプトの首都カイロ。優勝するか、出場決定国以外で最上位となればパリパラリンピックの出場権が得られることもあり、世界ランク上位の国が多数参加する大会となりました。
当初、16ヶ国が出場する大会と聞いていましたが、突然のキャンセル・エントリーなど、エジプトに到着するまで出場国が確定しないという状況で、最終的には13ヶ国での大会となりました(とはいえ、世界ランク上位の国は予定通りの参加でした)。
始まるまでにいろいろありましたが、1つ勝てば決勝トーナメントに行けるという予選プールに恵まれたこともあり、初戦のアルジェリア戦が大一番となりました。
アジア大会の韓国戦同様、初戦ですべてが決まる。そのプレッシャーを感じたせいか、1セット目は奪われたものの、そこから3セット連取し、勝利とともに決勝トーナメント出場が決まりました。
同じ予選プールに絶対王者であるイランが入っていたことも相まって「1勝すれば」という状況だったのですが、続くイランとの試合では「初めて1セットに20点を取った」という結果を収めることができ(1ケタしか取れないことも普通)、チーム力が上がったことを感じた予選の戦いでした。
決勝トーナメントはすべて実力上位の国との戦い。一戦必勝の気持ちで臨んだことは間違いありませんが、どれだけ通用するのか試す意識を持った上で、どこに差があるのか、何を埋めればいいのか検証する時間でもありました。
パラリンピックでメダル獲得や上位入賞が予想されるエジプト、ブラジルとの戦いは死に物狂いで、東京2020パラリンピックでボッコボコにやられたエジプトに食らいつき、ブラジルからは1セットをもぎ取り、これまでの日本代表からは格段に成長できたところを証明できました。
最終戦のイラクにも1セット先取できたものの最後は力負けを喫し、最終順位は8位でしたが、これまで、日本代表は国際大会トーナメントでベスト8に入ることがなかったので、史上初の結果とともに、世界ランクトップ10入り、そしてパリパラリンピック最終予選のチケットを獲得することができました。
来春の開催が予想される最終予選に向けて、チーム一丸となって強化に取り組み、ワンチャンスに賭けてきます。
パラアスリートとビジネスパーソン、それぞれの学びを対流させる
最後に少しだけ、これまでのギークスでのキャリア、そしてパラアスリートとしての自分がビジネスパーソンとしての自分に何をもたらしているか、書きたいと思います。
ギークスには、元々、パラアスリート採用枠として、2020年3月に中途入社しました。東京2020パラリンピックに何としてでも出場したいという想いから、開催までの数ヶ月間、トレーニングに集中できる環境を求め、シッティングバレーボールを仕事として認めてもらえる企業を探し、ギークスに加わりました。
しかし、入社直後にコロナ禍を迎え、東京2020パラリンピックの1年延期が決まり(当時は中止になるものだとばかり思っていましたが)、数ヶ月間だと思っていたトレーニング集中期間が1年数ヶ月に延びました。
当時の私はパラリンピック代表に選ばれるかどうか当落線上で、時間が欲しかった側の選手。言いづらいことではありますが、延期期間中、粛々と黙々とトレーニングに励み、リベロというレシーブ専門のポジションでの代表選出と試合出場を勝ち取ることができました。
トレーニングに集中できる環境を整えていただいたことには感謝し尽くせないですし、今もまだ、アスリートとしての挑戦を後押ししていただいていることは大変ありがたいです。
とはいっても、ギークスに入るまでは「生きづらさ研究」や「マイノリティ支援」を軸に、自身が立ち上げた団体でWEBメディアの運営やイベント企画・登壇、企業とコラボして新しいサービスの開発に取り組んでいた手前、仕事で結果を出すことにもウズウズしていました。
パラリンピックの代表に選ばれるのではないかと自信が湧いてきた頃、広報部門の業務を担いたいと提案し、受け入れていただきました。
今思えば、それはパラリンピックの半年前のことで、時期的には早すぎた提案でしたが、それだけギークスという会社に魅力を感じていたのだと感じます。もしコロナ禍がなく、半年間ほどで本番を迎えていたならば、その魅力には気づかなかったかもしれませんし、違う環境に移っていたかもしれません。そして今、メンバー、リーダー、部長とキャリアを駆け上がることができました。
ギークスには行動指針である「10の心得」があります。
IT人材事業本部のメンバーが特に大切にしているもので、私自身は「出る杭を讃える」が好きですが、「妥協のないつながり」「変化を楽しむ」「No1しか興味ない」「想いを語る」といった心得は、チームスポーツであるシッティングバレーボールにも通じるのではないかと考えていました。
ギークス入社以降、日本代表当落線上の選手だった私が、レギュラーとして国際大会に臨めるようになったのは、このインプットが大きかったと思います。
そもそも、団体を運営しているといってもフリーランスのような働き方でしたし、性格は自由奔放なタイプだったので、「組織で勝つために何が必要か?」についてはギークスが教えてくれました。
一方で、シッティングバレーボールの世界では、セッター(アタッカーにトスを上げる司令塔の役割)を担うことが増えた影響もあってか、「気分が乗っているな」「一つ前のプレイのミスを引きずっているな」「相手に気圧されているな」といった仲間の顔色を察する機会が増えました。
試合中、コート内にいる仲間がネガティブな雰囲気をまとっているとき、どのように、何と声をかけるのか。プレイとプレイの合間のわずか数秒という時間で「察して、声をかける」ことができなければ、チームは勢いに乗れません。また、並行して、試合に勝つための戦略、1点を取るためのプランも考えなくてはなりません。
これを仕事の世界に置き換えれば、戦略立案に業務進捗管理、メンバーフォローを同時進行することに他なりません。ギークスでの学びを生かし、シッティングバレーボールの世界で活躍できるようになると、今度は組織マネジメントに必要なことをシッティングバレーボールが教えてくれるようになりました。
パラアスリートとビジネスパーソンの二刀流を極めたい私にとって、それぞれの時間を区別することはありません。同じ線上にあるものです。そして、それぞれで得た学びや気づきをそれぞれに活用することで成果をつくっていく。インプット先が二つあることは贅沢な話です。
ただ、これからは、それぞれの学びを対流させ、それぞれの組織、チーム、メンバーに還元していくことが、ギークスで二刀流キャリアを構築させてもらっている私の役割だと思っています。まだ、この対流を自分ひとりにしか落とし込めていないのが実状ですが、今回のレポートをきっかけに、これまで以上に行動や言動に落とし込み、それぞれの組織への貢献度を高めていこうと心に決めています(この2段落「それぞれ」が多くてすみません)。
最後に、わがままなキャリアを応援してくれる、また業務のサポートを笑顔で進めてくれる(内心は分かりませんが)広報/サスティナビリティ推進部のメンバーをはじめとした、自分を取り巻くすべての方々に感謝の言葉を述べさせてください。いつも、ありがとうございます!
※各大会の試合中の写真は、WPVが撮影した公式写真を使用しております。