「Built for more」強固な土台から、ギークスグループとのシナジーで描く未来 ーLaunch CEO Damien Ross インタビュー

ギークスグループは、グローバルな事業展開の足がかりとして、2023年1月にオーストラリアのIT人材企業 Launch Group(以下、ローンチ)をグループに迎え入れました。
ローンチは、オーストラリアにおけるIT人材サービスの先駆的企業であり、自社開発の管理システムなどを強みに、現地の多くのIT人材と企業から厚い信頼を獲得し、成長を続けています。
今回、今年7月に来日したCEOのDamien Ross(ダミアン・ロス)に、ローンチの事業内容や強み、多様なメンバーが活躍する組織カルチャー、そしてギークスグループとして見据える今後の展望について、直接話を伺いました。
19年の歴史が証明する、揺るぎない信頼。

ーこれまでギークスでは、IT人材事業(海外)の中核を担うローンチの方々のインタビューなどをコーポレートサイトにて紹介する機会がなく、今回のインタビューはとても貴重な機会だと思っています。ローンチのことを深く知るためにも、まず初めに、改めて、ローンチの事業概要やビジネスモデルについて、教えてください。
日本の皆さまに、ローンチのことをより深く知っていただける機会をいただけたことを、とても嬉しく思います。私たちは2006年に設立されたIT人材サービス企業であり、オーストラリアとニュージーランドで事業を展開しています。
事業の中核を担っているのはコントラクティング事業(=企業とITプロフェッショナルとのマッチング)です。クライアント企業のプロジェクトに必要なスキルを持つITプロフェッショナルを必要な期間、支援するもので、ローンチの収益の約80%を占めています。正社員の人材紹介や専門職のエグゼクティブサーチも提供しています。
また、私たちの大きな特徴の一つにMSP(マネージド・サービス・プロバイダー)事業が挙げられます。これは単に人材を紹介するだけでなく、クライアント企業の人材調達プロセス全体を包括的に支援することができます。このMSP事業を支える独自の管理システムを活用した「仕組み」そのものを提供することで、オーストラリアのIT人材市場におけるユニークなポジションを築いていると自負しています。
ーギークスの創業が2007年なので、ほぼ同時期から事業をスタートし、市場を牽引してきているのだと思います。私たちは「IT人材業界の先駆者としてのポジショニング」や「長年培ってきた実績やノウハウ」を強みだと捉えていますが、ローンチの場合はいかがでしょうか。
まさに仰る通りで、私たちも19年間という歴史の中で築き上げてきた評価や信頼が強みだと考えています。
長年、オーストラリア市場に「質の高いITプロフェッショナル」を供給し続けてきましたが、これを支えているのはローンチが誇る「専門性の高いコンサルタント」です。ローンチのメンバーは単なる営業担当ではなく、サイバーセキュリティやAI活用といった特定の分野を深く理解し、企業のCISO(最高情報セキュリティ責任者)のような役職者とも対等にコミュニケーションが取れる、真のスペシャリスト集団です。
先ほど申し上げた、MSP事業を支える独自のテクノロジーを含め、「卓越した人材」と「優れたテクノロジー」の組み合わせこそが、他社には真似できない最大の強みだと考えています。

ー日本にいるとなかなかオーストラリア市場の動向が見えづらいところがあります。現在の市場状況やローンチの状況について教えてください。
オーストラリア市場は、ここ2、3年ほどは、非常に困難な状況にありました。私自身、この業界に20年以上いますが、これほどの需要の落ち込みは経験したことがありません。
主な原因は、インフレを抑えるための金利引き上げ政策による、企業の投資意欲の低下です。私たちのビジネスの多くは、お客様の未来への投資である「プロジェクト」案件に支えられているため、この影響を大きく受けました。
しかし、その困難な時期は過ぎ、今まさに市場は回復基調にあります。最大の要因である金利が既に2度引き下げられ、年内にはさらに3回の引き下げが見込まれており、市場のセンチメント(市場心理)は明らかに上向いています。
企業の投資意欲が回復してきたことで、私たちへのプロジェクトの依頼も増え始めています。このポジティブな変化は、当社の業績にもはっきりと表れ始めています。まさにこれから、という状況だと感じています。
ーそのポジティブな変化の中で、IT人材サービス業界の中で、ローンチが選ばれる理由をどのように考えていらっしゃいますか。
クライアントから選ばれる理由は、「メンバー」とその「素晴らしい仕事の成果」を通じて得られるものだと考えています。
私たちは自分たちが得意なことをクライアントに明確に伝え、その得意なことを本当に高いレベルで実践することに全力を注いでいます。クライアントにとって一緒に働きやすい存在となり、卓越した仕事によって目に見える成果を提供することを実践すれば、お客様は私たちの仕事に対して、適正な価格を支払うことに何の抵抗もなくなるはずです。
「Changing Lives For The Better」ー組織に根付くDNA

ーここからはDamienさんご自身の話やローンチの組織についてお伺いしたいと思います。先ほど「業界に20年以上いますが」というお話がありましたが、ローンチのCEOに就任されるまではどのようなキャリアを歩んでこられたのでしょうか。
私はこれまで25年ほど、HRテクノロジー、人材紹介、テクノロジーコンサルティングの分野でキャリアを歩んできました。
私のキャリアで最も大きな経験は、共同創業者として立ち上げた事業です。この会社は最終的にオーストラリアの別企業と合併し、私も自身の持ち株を売却しましたが、今ではオーストラリアで最大級の非公開(プライベート)人材・コンサルティング会社の一つに成長しています。
その後は、ライドシェア事業を手掛けたり、ビジネスコンサルティングやアドバイザーとして活動したり、他の人材会社で暫定CEOを務めたりと、いくつかのことに挑戦しました。したがって、ローンチは、私が自分の会社を離れて以来、初めてとなる本格的なCEOの役職です。このような素晴らしい会社のCEOを務めることができ、光栄に思っています。
ーローンチのCEOに就任後、注力されてきたことを教えてください。
CEOに就任して以来、私が注力してきたことは、大きく2つあります。
1点目は、メンバーがお客様と向き合う時間を最大限に確保することです。社内向けの業務から彼らを解放し、より多くの時間とエネルギーを、本来の目的であるお客様への価値提供に注げるよう、環境を整えてきました。
「コンサルタントの顧客対応時間を確保するための業務効率化」を今年度の経営戦略の柱としても掲げており、AI活用や業務の自動化などの施策も含め、注力しています。管理業務やプロセスは、仕事の成功のために不可欠なものですが、こういった業務の自動化や高速化が効率性を生み出し、会社としても、より大きな成功を収めることができると考えています。
2点目は、お客様との関係性をより深化させることです。単なる取引相手ではなく、長期的な成功を共に目指す「パートナー」としての関係を築くことを重視しています。
信頼を築くには長い時間がかかりますが、失うのは一瞬です。ですから、常に素晴らしい仕事を一貫してやり続けなければなりません。そのためには、時には「ノー」と言うことも必要です。何にでも「イエス」と答えていては、かえって評判を落とすことになりかねません。こういったスタンスが、付加価値の高いプレミアムなサービスの提供をもたらし、将来の収益性向上に繋がると確信しています。

ーDamienさんの取り組みを伺いながら、ローンチにはクライアントの皆さまへの真摯な姿勢、そして、プロフェッショナルとしての自信を持つメンバーが多いことが伝わってきました。そういったメンバーが集まるローンチには、どのようなカルチャーが広がっているのでしょうか。
私の考えでは、組織におけるカルチャーとは「どのような行動を奨励し、どのような行動を抑制するか」で決まるものだと思っています。その上で私たちが目指しているのは、メンバーが互いに協力し、切磋琢磨し、成功を共に祝い、そしてローンチでの時間を楽しむ、そんなカルチャーです。
このカルチャーを体現しているのが、私たちのメンバーです。イギリス、アイルランド、インド、ネパール出身のメンバーなど、さまざまな国籍のメンバーが在籍していますが、彼らには共通点があります。
それは、一人ひとりがこの業界で実績を積んできたプロフェッショナルであり、「スペシャリスト」であろうとする強い意欲と「協力的(コラボレーティブ)であろうとする姿勢」を持っていることです。
国籍や経験は多様であっても、根底にある価値観や目標を共有しているからこそ、私たちの職場は非常に調和が取れていて、同時にお互いにとって刺激的で面白い場所になっています。

ーメンバー間で「価値観の共有」を大切にされていることがよく分かりました。会社として、より大きな指針である「Purpose(パーパス)」についても教えていただけますか。
私たちのPurpose(パーパス)は「changing lives for better(人生をより良く変える)」です。
私たちは、人々のキャリアを支援するという、尊い仕事をしています。キャリアは人生の重大な決断であり、その人の家族など、人生の他の側面にも影響を及ぼすものです。 私たちはその責任を真摯に受け止めています。
Mission(ミッション)として「Connecting with purpose(目的を持った繋がり)」を掲げていますが、これは、私たちが提供する人材ソリューションを通じて、個人のキャリア(people)、顧客企業(organisations)、そして地域社会(communities)の三者をより良くしていく、という決意を表しています。
このPurposeとMissionを日々の業務で実践するための行動指針として、caring(思いやり)、authenticity(誠実さ)、excellence(卓越性)、accountability(説明責任)、trust(信頼)という5つのValues(バリュー)を掲げています。日々の仕事における一つひとつの繋がりを、単なる取引ではなく、目的意識を持った意味のあるものにする。これが私たちの行動の核です。
グループシナジーは未来を加速させる

ー先日行われた全社イベント「Kick Off Meeting」にて、今年度のテーマ「Built for more」が発表されました。その言葉に込められた想いを教えてください。
「Built for more」というフレーズには、Launchが築き上げてきたものへの誇りと、さらなる成長への決意が込められています。
私たちには、19年の歴史の中で築き上げてきた強固な土台があります。素晴らしい歴史と評判、メンバーの成長への多大な投資、そして彼らが最高の仕事をするための適切なツール。これらビジネスを成長させるための土台は、すでに整っています。
ただ、Launchにはまだまだ大きな伸びしろがあります。今年はその強固な基盤を土台に、新たな飛躍の年にする。そんな強い意志を示しています。
ー今後の展望についてお聞かせください。ローンチの未来をどのようにお考えですか?また、今後数年間で、特に注力していきたい目標や方向性があれば教えてください。
まずは、オーストラリア経済が回復基調にある今、成長に向けてしっかりとドライブしていきます。基本的には、私たちがやるべきことは変わりません。お客様のために質の高い仕事を続け、強いロイヤリティを築くこと。そして過去の反省を踏まえ、今後はより高付加価値なビジネスに注力していきます。
お客様の期待を超えるサービスを提供し続けるには、業界や市場のトレンドを理解することも欠かせません。機械学習やAI関連の専門職の需要が高まる中、私たち自身がそうした領域に関する専門性を備え、お客様を支えられることも重要です。
Launchの未来をつくるのは、人です。だからこそ、最高の人材を惹きつけ、長く活躍できる環境を整えることが不可欠です。メルボルンとシドニーのオフィスには、本当に素晴らしいチームが育ってきました。彼らは非常に優秀で、これからも大きな成果を上げてくれると信じています。

ー今後の展望が非常に楽しみです。最後の質問となりますが、ギークスグループの一員として、グループとのシナジーについてはどのようにお考えでしょうか。
ギークスグループとのシナジーには、本当に大きな可能性があると感じており、既に具体的な動きも始まっています。
シードテックとの協業がその先例であり、ローンチが持つオーストラリア市場での顧客基盤や営業力と、シードテックが持つフィリピンのオフショア開発拠点の機能を組み合わせることで、APAC(アジア太平洋)地域全体をカバーする、より広域なソリューションの提供が可能になります。
ギークスグループが持つ日系企業との強固なリレーションを活かし、オーストラリアで事業展開するお客様を、ローンチが現地でサポートするといった連携も、私たちの価値を高めてくれるはずです。

ギークスが抱える優秀なITフリーランスの皆さんがオーストラリアの案件に参画することも予測できますし、その逆もあり得るでしょう。ITエンジニアを通じた「知見の相互移転(transfer of knowledge)」をサポートできる体制の構築も機会として捉えられると考えています。ギークスグループとして、技術リソースのグローバルシェアリングプラットフォームを有することは面白そうですね。
このように、グループ各社の強みを掛け合わせることで、これまで一社だけではできなかったような、大きな価値を生み出せると確信しています。これからの連携が非常に楽しみです。
ー貴重なお話を伺うことができました。ありがとうございました!