「人として」信頼されなければ、広報の仕事は成り立たない。広報対談 第2回 KOMPEITO 白井小百合さん
ギークスの広報・サスティナビリティ推進部では3人のメンバーそれぞれが、広報・インナーコミュニケーション・サスティナビリティ推進という業務領域を担当しています。
リリース、ブログ、レポート、イベントなど、様々なアウトプットを社内外に発信していくために、それぞれがネットワークを広げながらインプットの機会を増やし、情報のアップデートやアイデアのブラッシュアップ、多様な価値観の形成を進めています。
2024年9月より「広報対談」として、様々な企業の広報担当者との対話を通じ、広報担当者として役立つ視点や考え方などをまとめつつ、私たちのこれまでとこれからを整理する記事をまとめることにしました。
第2回のゲストは、株式会社 KOMPEITOのPRを務める白井さんにお越しいただき、広報を担当する荒川と対談しました。
広報担当者はどうしてイベントを開催しがちなのか?
ー企業の広報担当同士の対談企画である「広報対談」。第2回は、KOMPEITOの白井さんにお越しいただきました。本当にありがとうございます。まずはお二人が知り合ったきっかけを教えてください。
白井さん:「渋谷広報コミュニティ」という集まりがきっかけです。私自身、いわゆる「ひとり広報」で、他社の広報の方々との横の繋がりを広げていきたいなと思って、参加しました。元々、Xのアカウントで荒川さんをお見かけしていて、ドラマ好きという共通の趣味があることを知ってフォローしていたんです。ランチ会にいらっしゃると聞いて楽しみにしていたら、当日、気さくに声をかけていただきました。
荒川:初めて会った時からビビビッときたといいますか、白井さんとは仲良くなれそうな気がしたんです。仕事の話もしますが、今ではお互いの家に遊びにいったり、一緒にお笑いのライブに行ったり、本当にプライベートでも仲が良くて、公私共に大切な仲間、友達です。
白井さん:第1回の広報対談も拝見しましたが、スペースマーケットの伊藤さんも「渋谷広報コミュニティ」繋がりなので、このコミュニティ自体、いいバイブスがあるのかもしれません。アグレッシブで、テイカーではないメンバーが集まっているといいますか、広報パーソンとしても、一人の社会人としても、いい仲間達と巡り会えていますね。
荒川:私自身、社会人になってここまで気を許せる仲間に出会えるとは思っていませんでした。同じ職種だからこその悩みや不安を共有できることはありがたいですし、くじけそうな時に褒め合える、称え合える存在がいることも嬉しいです。
※ひとり広報…その企業において「ひとり」で広報を担っている人のこと。広報に関する全ての業務を「ひとり」で行う。
ーお二人の絆の深さがとても伝わってきたのですが、お二人は「若手広報交流会」という広報担当者向けの情報交換会・交流会を企画、運営しています。
白井さん:KOMPEITOに入社後、未経験から広報となり右も左も分からない中、少しでも広報パーソンとして成果を上げられるように、本を読む、ネットで情報をかき集める、勉強会に参加するなど、やれることは何でもやってきました。その中で社外に相談相手がいることの心強さを痛感したんです。広報3年目になり、何か還元できないか、貢献できないかと思っていた時に、このイベントを思いつきました。
荒川:その話を聞いた時に「私も混ぜて!」とすぐに手を挙げたんです。「広報に正解はない」という軸を持って、日々の仕事に向き合っていますが、私なりにこれまでやってきたことを対外的に確認・検証する機会がほしいなと思っていて、ここだと思ったんです。私の話が役に立てば嬉しいなという気持ちと、参加者とのコミュニケーションの中で自分のアウトプットに対するコメントをいただくことがこれからの広報業務に活きるので、その2つの意識を持って企画に参加し、登壇しました。
白井さん:HATARABAの広報の赤井さんを含めた3人で会を運営していますが、メディアリレーション、SNS活用、イベント、採用広報、危機管理広報など、それぞれに得意なジャンルがあったり、私たち自身が気になっているテーマがあったりします。その時々のトレンドを含めたテーマ設定を行い、交流も大事な要素なのでその内容も工夫しながら、継続的にイベントを実施できればと思っています。
荒川:白井さんとこういったイベントを企画するなんて、会った当初は思いもしていませんでした。広報は横の繋がりを求めがち、勉強会や交流会を企画・運営しがちという「広報あるある」があり、他のイベントやコミュニティもたくさんあるので、違いを生み出しながら、自分たちのペースで開催していきたいですね。
広報担当者はどうやって社内の情報やニュースを集めてくるのか?
ー広報は情報発信が仕事の役割の中核にあると思います。発信する情報をどうやって社内で集めてくるのか、お伺いしてもいいでしょうか。
白井さん:情報のキャッチアップは広報業務の生命線であり、永遠の課題だと思います。私の場合、社内のチャットツールが情報源です。当社ではSlackを使っていますが、社内で一番ではないか?というくらい、たくさんのチャンネルに参加しています。一見、広報業務に関係ないようなチャンネルにも参加していますが、どこからニュースが溢れてくるかわからないので、情報収集の網をどれだけ広げられるかは大切ですね。
荒川:これはどの企業にも当てはまることだと思いますが、広報だからといって、経営層や事業部の皆さんから自動的に情報が共有されるわけではないので、自分からどれだけ情報を取りにいけるか、情報を集める仕組みと仕掛けを整えられているかが鍵ですよね。
白井さん:各チームの日報も見ているんですが、リリースのネタになるような話もあれば、社内広報として伝えたほうがいい情報も流れてきます。成果を出しているメンバーの日報を見た後は、社内で会った時に「最近調子いいじゃん!」と話しかけることもできるので、メンバーとのコミュニケーションのきっかけを拾うことにも役立っています。
「人として」信頼されないと情報は集まってこないので、どんな情報が流れているかだけでなく、どんな言葉選びをしているか、どんなスタンプを使っているかから、どんな声かけが必要かまで考えて、Slackを眺めていますね。
荒川:イベントの企画会議や本番当日にオフィスに伺うと、白井さんがメンバー一人ひとりに声をかけているのが素敵だなと思っていました。挨拶を交わしているだけではないですし、一言一言に愛があるというか。会うと元気になれたり、ハッピーな空気感が生まれたり、ご自身のキャラクターも活かしながら、仕事に繋げているんだろうなと感じます。
白井さん:その言葉だけで涙が出てきちゃいますね。セルフブランディングと言いますか、「話しかけやすい人」というイメージを作ることは意識しています。
ーお話を伺っていると、社内における信頼関係が重要だと感じました。お二人とも中途入社でそれぞれの会社に加わって広報を担当しているのだと思いますが、信頼関係を構築するために入社当初に行ったことはありますか。
白井さん:まずは「自分普及活動」ですね。私が入社するまでKOMPEITOに広報専任は不在で、立ち上げからだったこともあり、入社してすぐの頃から「私、広報です、よろしくお願いします」と会う人全員に自己紹介していました。存在を知ってもらわないと始まらないですし、顔を覚えてほしかったんです。何かあったら私まで連絡くださいという環境を作らなくてはいけなかったので、とにかく最初の1ヶ月は「自分普及活動」をしました。「ひとり広報」という状況も影響していたと思います。
荒川:私の場合は真逆で、入社直後に何もできなかった分、時間をかけて信頼関係を構築していきました。元々の気の小ささや度胸のなさから、ちょっとした挙動や言動に怯えてしまって、上長に「MTG同席してください」「一人じゃ無理です」と「個」で立ち向かえなかったんです。白井さんの前では言いづらいですが「ひとり広報」じゃなくて本当に良かった(笑)。
ギークスに入社する前はアパレルブランドにて広報を務めていましたが、ブランド力の高さもあり、私自身の介在価値やそこから得られるやりがいをあまり感じられなかったんです。広報パーソンとしての地力を培う意味で「toC広報」から「toB広報」に転職したのですが、自信がない、経験がない、やり方もわからないといったことで、その結果が先ほど話した「一人じゃ無理です」で、何のために転職したのだろうと。こうやって自己開示するのは恥ずかしいですが。
今思うと、入社半年が過ぎた頃、社内イベントの企画の責任者になったことが転機です。社内調整に悪戦苦闘し、私がやりたいと思ったことがなかなか通らなかったり、急な要望が入ってきたりして、モヤモヤしていたんです。でも、その時、相手も同じようにネガティブな感情が生まれているのかもしれないと気づきました。自分が先手先手で動くことで、お互いが気持ちよく仕事ができるようになるのではないかと思い至ってからは、能動的に動けるようになり、その結果が今に繋がっていると思います。
ー入社から一定の期間が経っていると思いますし、メンバーとの信頼関係も厚いのだと思いますが、メンバーとの関係性の中で意識していることはありますか。
白井さん:社内のコミュニケーションツールがチャット中心になりつつありますが、感謝の気持ちはスタンプじゃなく、言葉で伝えたいという想いは強いですね。当社には「ありがトマト」という公用語があり、そのスタンプを押すのは簡単なんですが、相手が出社していたら直接「ありがとう」と伝えることを大切にしています。
荒川:顔を見る、声を聞くということは大切にしているかもしれません。当社もSlackを使っていますが、チャットコミュニケーションだと、そのテキストだけだと言葉の裏側の感情が判断できない時もあるんです。本社でも事業部と広報はフロアが違いますし、地方のメンバーとのやりとりは物理的距離があるので、ハドルで話す、meetを繋ぐ、近くにいる時は直接話に行ったり顔を見たりと、感情を伝える・察するコミュニケーションを意識していますね。
白井さん:二人とも心配症なところがあるのかもしれませんが、これは相手には求めていなくて、自分がやりたいからやっていることなんですよね。相手を不安にさせるようなことはしたくない、私自身も安心したい、だからやっているという流れだと思います。
ーなるほど。広報に限らず、組織内で働く方々すべてに当てはまりそうな、社内コミュニケーションで大切にしたいことですね。現場から集めてくる情報以外にも、会議への参加や議事録の共有などもあるのではないかと思うのですが。
白井さん:仰る通り、情報収集はチャットだけでなく、社内の様々な会議で決められたことや議論されたことを共有してもらうことも大切です。ただ、これも「広報だから」といって共有されるものではないですし、私自身、一定の期間を経て、共有フローの中に加わることができたものもあります。社内の信頼の積み重ねなくして、この仕事は成り立たないなと強く感じています。
荒川:現在だと、いくつかの事業部やグループ会社との定例MTGを行っていますが、これも当たり前のことではないと感じています。広報の価値を提供し続けない限り、情報共有の機会が設定されなくなってもおかしくありません。危機感は常に持っています。
最近では、リリースの内容にコメントをくれたり、これってニュースになりませんか?と尋ねてくれたり、広報からのアウトプットに興味を持っていただくメンバーが増えてきました。アウトプットのクオリティを高め、広報に対する期待を強めることが、巡り巡って、情報収集の機会創出に繋がっていくのかもしれません。
広報担当者はどうやって発信する情報の選別を行うのか?
ー実際に集めてきた情報がすべて社外へニュースとしてリリースされるわけではないと思います。ニュースとして発表するか否かなど、その判断で大事にしていることはありますか、
白井さん:また難しい質問が飛んできましたね。私も知りたいくらいです(笑)。正直、入社してすぐ、広報になってすぐは「ネタがあるのはありがたい、すべてニュースとして対外的に発表しよう」と思っていました。ただ、決してそうではないんですよね。
自社がニュースと思っているだけで、社会的、業界的に見れば新しくはない情報もありますし、社会的なバリュー、内容の深さや鮮度、自社としての想いなどを総合して判断しています。ただ、私個人で判断するのではなく、自分なりの見解を持った上で、部門長を含めたPRのMTGで最終判断を下していますね。
荒川:判断軸を明確に持つことは難しいですよね。定期的に発表しているデータ、業務提携、自治体連携、イベント開催など、ニュース区分によってそもそもリリースすることを決めているものもありますが、当社が先日発表した地方拠点拡大のニュースのように、内容やタイミング、会社や組織の状況に合わせて発表するものは悩ましいのが本音です。
白井さん:ニュースリリースは、メディアプロモートするか否かという判断軸も加わってくるんですよね。自社のニュースがメディアに取り上げられるかどうかはとても重要なので、広報担当者としての経験値や読みも判断には影響します。
荒川:メディア掲載、ブランディング、マーケティング、サスティナビリティ推進、採用、IRとの連携など、ニュースを打つ理由、目的にも左右されますよね。「toB」か「toC」かによっても、ニュース量の違いなどあるので、判断軸は広報担当者の色が出る部分でもあると思います。
ー情報を受け取る側がいるからこその情報発信だと思いますが、クオリティや見せ方などでこだわっていたり、気をつけていたりする点はありますか。
白井さん:読み手目線を忘れないことですね。ニュースリリースだけでなく、あらゆる場面でのコミュニケーションにおいても同じですが、誰も傷つけない、ネガティブな気持ちにならないような言葉選びには気をつけています。想いが強くなればなるほど、勢いのままに原稿を制作してしまうこともあるので、例えば、書いた文章は一晩寝かせて、次の日の自分が確認するというように、客観的な視点を用いた確認作業を実施しています。
荒川:当社だとデザインの統一感を大切にしています。創業15周年のタイミングでコーポレートカラーがブラックネイビーへと変わったのですが、リリースやブログのサムネイル画像、レポートで使うグラフや図表などで使う細かな色合いにも留意しています。同業各社の中で「これはギークスのアウトプットだな」と一目で分かることもブランディングの結果だと思うので、さらに継続していければと思っています。
ーいろいろとお話を伺ってきましたが、最後に、今後の目標やビジョンなどを教えてください。
白井さん:私個人としては、社内を明るく照らせる人でありたいということが第一です。「世の中にシゲキをつくる」というミッションを掲げ、事業と組織が急拡大している中で、私自身の存在で周囲のメンバーをエンパワメントしていきたいですね。
また、広報という仕事で考えると、プロフェッショナル意識を高めるということに尽きます。経営機能の一つである自覚をこれまで以上に持ち、経営陣に対する発信力や提案力を培っていかなくてはと感じています。視座を上げ、インプットの質を高め、今までやってきたこと以上のプラスアルファを生み出し、信頼と評価を強固なものにしていきたいですね。
荒川:前回の広報対談でもお伝えしましたが、メディアの方々がIT業界や人材業界で知りたいことがあれば、「とりあえずギークスの荒川に話を聞いてみよう」と想起してもらえるような広報パーソンになりたいです。ギークスという会社をより多くの方に知っていただくことで、その状態へ近づけられるのではないかと思っています。
最近では「自分が最終決定者である」というスタンスを意識するようになりました。ニュースリリースひとつにしても、経営陣、事業部、IR、PRなど様々な観点があります。「これで発表します」と言い切れるだけの自信を持つためにはどのような視野視座で取り組まなければいけないか、足りない何かを埋めるためにはどのようなインプットが必要なのか、広報パーソンとしての努力の方向性を見出す上でも、このスタンスを大事にしていきたいです。
ーありがとうございました!
対談を終えて
白井さんの、積極的なコミュニケーションを通した社内メンバーへの姿勢や振る舞いは、広報の仕事において大事な核となる部分だと改めて感じました。社内だけでなく、メディアの方々をはじめとした様々なステークホルダーの方々への対応もきっとそうなのだろうと想像できます。
PRは、Public Relationsの頭文字をとったものであり、「ステークホルダーとの良い関係づくり」を意味します。単なる情報発信だけでなく、時流やトレンドを把握し、自社の情報発信活動に反映させる役割や、社内メンバーを含むステークホルダーの方々をエンパワーメントする役割も含んでいます。
今日改めて白井さんのお話をお伺いして、自分にはまだまだホスピタリティが足りていないのではないかと気づかされました。コミュニケーションは「良い関係づくり」を築く上で基本中の基本だからこそ、適宜見つめ直す必要があると、今後意識すべき点や改善すべき点を考えるきっかけになりました。貴重な機会をありがとうございました!