時代に合った情報発信で、「偶然の出会い」をつくり出す。日本シャフトとギークスの取り組み
ギークスのx-Tech事業本部では、ゴルフ情報サイト「Gridge」の運用実績を活かし、スポーツ業界のクライアントに特化したデジタルマーケティング支援を行っています。
今回は、当社のお客様であり、ゴルフシャフトブランド「N.S.PRO」を展開する日本シャフト株式会社 営業部の栗原様に、ギークスに販促支援を依頼した背景や今後の展望を伺いました。
(取材・執筆:広報 Arakawa)
国を越えて、多くのゴルファーが支持する「N.S.PRO」とは
ーまずは、日本シャフト様についてご紹介いただけますか。
栗原様:日本シャフトは、1959年に、「ばね」の世界トップメーカーであるニッパツのグループ会社の一つとして誕生し、主にゴルフシャフトの製造を行っています。
シャフト「N.S.PRO」ブランドを中心に、スチール・カーボンの2つの素材において完全国内生産を行っている、国内唯一の総合シャフトメーカーです。スチールシャフトの領域においては、世界でもトップシェアを誇っています。材料開発から商品開発、製造から品質管理に至るまでの全てのノウハウを蓄積してデータ化し、独自の設計プログラムと製造プロセス・品質の一元管理によって、他の追随を許さない精緻なゴルフシャフトづくりを実現しています。
クラブメーカー企業様に、シャフト部分をご提供したり、現ユーザーさんにご使用いただいているクラブの、シャフト部分を交換してカスタマイズする「リシャフト」のご提案も行っています。
ー「N.S.PRO」とはどのような製品なのでしょうか。
「すべてのゴルファーへのジャストフィット」をコンセプトに、国や世代、性別を超えて多くのゴルファーにご支持いただいています。幅広いラインナップを製造しているので、クラブセット14本の全てを「N.S.PRO」で揃えることができ、クラブの振り心地や機能を統一できます。これはスチール・カーボン共に製造しているからこそできることです。
なぜ「デジタルマーケティング」が必要なのか。ゴルフ業界が抱える課題とは。
ー現在ギークスにYouTube運営を任せていただいています。ギークスにご依頼いただいた背景を教えてください。
栗原様:担当のUjiさんとは数年来のお付き合いになりますが、ゴルフ業界はもっとデジタルマーケティングを進めていくべきだ、メーカー自ら発信していくメディアを持ったほうがいい、と粘り強く説得に来てくれました。最初はYouTubeを始めることに抵抗を感じていましたが、真剣に考えるきっかけをくれたこと、ゴルフ業界や自身の考え方の変化も相まって、YouTubeを始めることに意識が向き始めました。
新しいことに取り組むとなれば、やはり信用できる、安心して任せられる人に依頼したいと思っていました。そこで、熱意を持って説得してきてくれ、会社やプロダクトを深く理解してくれているギークスのUjiさんにお願いしたいと依頼しました。
―最初は抵抗があったとお話しいただきましたが、具体的にどのようにお考えだったのでしょうか。
栗原様:元々日本シャフトは、紙のゴルフメディアを中心に掲載・広告出稿をしていました。というのも、「ゴルフシャフト」というものがそもそも、ゴルフ業界の中でもマニアックな世界。これまではある程度ゴルフ歴が長い方々がターゲットとなっており、そういった方々が日ごろ情報を収集する際に見ているものが雑誌や新聞だったからです。
また、メディアによっては企業の規模感や会社情報による審査が必要な媒体もあり、紙に掲載することに対して「メーカーとしてのプライド」もありました。
対して、YouTubeは参入にあたって、障壁がほぼありません。スマートフォンやPCさえあれば誰でも始めることができ、無料で情報発信ができます。長くゴルフ業界でやらせていただいているメーカーとして、「情報発信はしっかりとお金をかけてしなければいけないもの」という認識がどうしても強かったんです。
YouTubeは「インフルエンサーになりたい方が使うツール」というイメージがあったこと、YouTubeがニュースに取り上げられる際、大体が良い事ではなかったことから浮ついているイメージが先行していたのも理由のひとつです。
「新しいことをやるべきなのは分かっているけど..」という認識はありつつも、私自身が懐疑的だったので真剣に動いていなかったんですね。
ーそこから、どのような変遷を経て、YouTubeをスタートすることになったのでしょうか。
ゴルフ業界とゴルファーの変化、そして、私自身のYouTubeへの見方が変わったことです。
メディアの種類で見ると、ゴルフ業界は雑誌が一番多い業界でした。つまり、雑誌を購入して情報を得るゴルファーが多かったんです。それがインターネット・SNSが急速に普及し、そこから情報をキャッチする人が徐々に増え、雑誌が売れなくなってきました。
ただ、雑誌を立ち読みする人の数は減らなかったこともあって、「立ち読みでも良いから読んで情報を拾ってくれたら」と、コンビニに置かれるゴルフ雑誌を狙って出稿することもありました。ところが、2019年末からコロナの感染が拡大し、外出もできない、感染対策も厳しい状況の中で立ち読みの文化すらなくなってしまったんです。「情報を届ける手段がなくなった」と感じました。
しかし、幸いなことにコロナ禍は悪い事だけではありませんでした。ゴルフが3密を避けてできるスポーツということもあり、若年層のプレイヤーが一気に増加。逆に広告を出稿しても生産が追いつかず買うことが出来ない、という”ゴルフバブル”が発生しました。
これまではお店や口コミ、ゴルフ場のクラブの有料会員になるなどして情報を収集・共有するゴルファーが一般的だったのに対し、情報の入手方法や行動のきっかけがインターネット・SNSに変わり始めました。
そういった変化から、私自身としても、せっかく興味を持ってゴルフを始めてくれたからには、楽しく長く続けてもらいたい、もっとゴルフの楽しさを知ってもらいたい、気軽に始められるスポーツだということを広げていきたいと思いました。そのためには、時代に合った情報発信で、正しく分かりやすく、かつ楽しく伝える必要があると感じたんです。
ー栗原様のYouTubeへの見方は、どのように変化したのでしょうか。
Webメディアに出稿した際、ターゲットを選んで発信できるというWebメディアならではの強みを知って「とても良いな、今後もやっていけたらいいな」と考えていました。
そんな時にふと思ったんです。YouTubeもなんとなく開いて、「これ面白そう!」とオススメを観ることで新しい情報に触れることができる。ある意味、紙の雑誌をめくっているのと同じじゃないか?と。
これから新しいファンを作りたい、と考えた時に、雑誌のような「偶然の出会い」に手を伸ばしていかなければ、新しいお客さんとの接点を作ることができません。紙媒体が減少していくのに対して、SNSや動画コンテンツは拡充しています。
「正しい情報をどのように、かつ、キャッチーに発信して、いかにより多くのお客様に見つけてもらえるか」。これは、実行しているチャネルが異なるだけで、目的としては雑誌広告と全く同じだと感じたんです。それなのに、抵抗を持つのは間違っている、と急に思いました。
そんな気づきもあり、「そろそろ始めても良いかも」と考えた時に、またUjiさんから声をかけてもらったんですよね。
そこで、お試しとして、他チャンネルとのコラボレーション企画に参加させてもらいました。その動画を自社でも発信したところ、ユーザー様からの反応も良く、お店や試打会で「YouTube観ました!」と声をかけてもらったり、「YouTubeをきっかけに購入しました」と言ってくれるユーザー様も増えたんです。
これはもう、メーカーのプライドとかを言っている場合ではない。「ここにこそ新しい偶然の出会い」のチャンスが転がっている、と強く感じました。
また、インターネットやSNSには自社が伝えたい内容とは異なる解釈をした情報も、数多く存在することに気づきました。その情報を鵜呑みにして、日本シャフトの製品を買ってくれた方々に「想像と違った」と思わせてしまう可能性が少しでもあるとなると、やはりメーカーとしては悔しいですし、ユーザーの方々にとってもマイナスです。
そんな事態を避けるためにも、自社で発信できる場所に、少しでも多くの正しい情報を置いておく必要があると実感しました。
そんな様々な背景があり、ギークスに依頼をしてYouTubeを始めることに決めました。
ー開始までの道のりはどのようなものだったのでしょうか。
新しい取り組みをしていくべきだとは会社も考えていたものの、中には「YouTubeなんて今だけじゃないの?」という声も正直ありました。
しかし、逆に言えば今やらないと置いていかれてしまう。時代に合った情報発信を始めなければ、このタイミングでゴルフを始めた若年層が年齢を重ねた時に、日本シャフトの存在は忘れられてしまうのではないか、という危機感を私自身持っていました。
もしこの先、ゴルフ業界自体に何かあったとしても、市場に左右されずに、ずっと覚えてもらえるようなメーカーになるためには、YouTubeを始める必要があると説得しました。お試しで参加したコラボレーション企画のYouTubeでの実績や、それを受けてのユーザー様の声をゴルフ業界の現状とともに話し、社内を説得。無事にスタートすることが決まりました。
ギークスは「半歩先を歩いてくれる」存在
ー実際にYouTube発信を始めてみていかがでしょうか。
まだ4月に始めたばかりではありますが、既に良い反応を感じています。
インプレッション数やチャンネル登録者数、視聴者数も順調に増えていますし、高評価・コメントの数もとても多い。中でもコメントは一つひとつに熱意がこもっており、質問系のコメントも多いです。また、「動画の通りこうしてみたらうまくいきました!」と、実際にYouTubeを観て試してくださるユーザー様からの声もあります。
全てのコメントに目を通し、返信させていただいているのですが、ユーザー様のご意見や嬉しい声を直接聴けることはとてもありがたいですし、ファンの方々がしっかり観てくださっているなという実感があります。
驚いたのが、「いつも楽しみに観てます!」と、一般の方に街で声をかけられたことです(笑)。試打会では「栗原さんに見てほしい」と言ってくださる方もいらっしゃいました。楽しく長く続けてくれるようなファンをつくっていけたらと思っていたので、少しずつ実現できているようで嬉しかったですね。
また、チャンネル登録者以外の視聴者も多くを占めており、目指していた「偶然の出会い」が実現できている、と感じています。というのも、日本シャフトの製品はそれぞれターゲットが異なっているので、チャンネル登録者数にはこだわっていないんです。いかに新しい出会いをつくることができたかか、を大事に発信していますし、その想いをギークスと共有できている・理解してくれていると感じているのも、良い点だと思っています。
ー他社からデジタルマーケティングについてお声がけもあった中、ギークスを選んでくださいました。率直にどのような印象を持たれているか伺いたいです。
栗原様:ギークスのx-Tech事業本部の皆さんが熱心なゴルファーだということは、非常に大きいと思います。経験者だからこそ訴求したいポイントを理解したうえで、観ていて気持ちが良い編集をしてくれます。
具体的には、すべての動画で「このシャフトを表す決め台詞」を出しているのですが、「ここ使ってほしかったのに、カットされてしまった」と思った事が一度もありません。キャッチーな言葉で発言したわけでもないのに、ズレなくポイントを押さえて拾ってくれているんです。編集内容についてのダメを出したことはありませんし、最近は2倍速で確認しているくらい(笑)、信頼しています。
また、こちらの要望をきちんと全部聞いたうえで、「それならこうするのはどうですか?」と提案してくれるので、やりやすいですし、楽しく取り組むことができています。
もともと、「大変そう…」という思いの中でYouTubeを始めているので、自己主張が強く、納得できていない状態のまま、「でもYouTubeってこういうものなんで」とぐいぐい進められてしまうと、自ずとやる気も起きなくなってしまいます。
1.2歩先に行かれると追いつけない。でも同じペースでも困る。ギークスは新しいアイデアをくれますし、私たちの考えややりたいことに寄り添いながら、常に半歩先を歩いてくれます。とてもありがたいなと思いますし、これからもそういう存在でいてほしいですね。
今後取り組んでいきたいこととは
ー今後、YouTubeで取り組んでいきたいことを教えてください。
栗原様:今はいろいろなテーマ・シチュエーションを実行しながら反応を見ているところですが、いつかYouTubeを観てくれている方々とコミュニケーションをとれる機会を作りたいと思っています。
コロナ禍でオフラインでのコミュニケーションがとれなくなり、試打会ができる会場も限られています。できれば直接会って話したいですし、ユーザー様の喜ぶ顔や姿を直接見たいですね。ユーザー様の反応や喜びは、YouTubeのコメントですごく伝わってきているので、次はYouTubeを通して、オフラインでの何かイベントが企画できればと考えています。
また、「ゴルフを始めたからYouTube見て勉強しよう!」という人にもっと届くように、今後も頑張っていきたいですね。
ー最後に、日本シャフト様が目指す未来についてお聞かせください。
栗原様:みんなにとって身近なブランドでありたいと思っています。ただそれは、単に距離が近い、という意味合いではありません。
ゴルファーの多くが知っていて、手を伸ばせば触れられるし、みんなが手を伸ばしたいと思う。技術にこだわったジャパンメイド、高品質を誇りに製作しているので、独りよがりではなく、そこにしっかり共感してもらえるような存在であり続けたいと思っています。そのためにも、情報発信を引き続き頑張っていきたいですね。
あとがき
取材を通して、業界全体の変化を受け入れ、課題を洗い出し、それに沿ったアプローチをしていく重要性を感じました。
ギークスでは徹底したクライアント理解と独自のゴルフメディア運営のノウハウを生かし、一社一社の課題解決に向けたデジタルマーケティング支援を展開しております。最適なサポートができるように、今後も努めてまいります。